女性ホルモンと更年期の過ごし方

                  

 

ここでは抗加齢医学会の女性アンチエイジングセミナーの勉強会内容をシェアしています。
女性ホルモンについての基本的な内容はこちらにまとめています。私の専門分野ではありませんが、女性として入れておきたい最低限の内容を自分のメモ代わりに残したので良ければご参考までに^^ 女性ホルモン基本

 

更年期とは

更年期の診断は、婦人科ガイドラインでは、閉経から1年間生理がないことが基準とされています。更年期の典型的な年齢(40-60歳)は、甲状腺疾患やうつ病が増える年齢とも重なるため、これらの疾患が更年期の症状と見分けにくく、診断の際には注意が必要です。

エストロゲン受容体の役割とその分布

エストロゲン受容体にはα型β型の2種類があり、それぞれ異なる臓器に広がって重要な役割を果たしています。

  • α型受容体は、子宮、卵巣、乳腺などの生殖器官に多く存在し、生殖機能の調整や乳腺の発達に関わっています。エストロゲンが低下すると、これらの臓器において機能低下や異常が生じやすくなります。
  • β型受容体は、骨、脳、血管、肝臓などに分布しており、骨密度の維持、神経機能の安定化、そして肝機能の調整に寄与しています。エストロゲンの減少は骨密度低下や精神的な不安定、さらに内臓脂肪の増加を招く可能性があります。

このように、エストロゲンの不足は受容体の分布に応じた臓器に影響を及ぼし、幅広い症状が現れる可能性があります。

 

エストロゲン低下による諸症状

更年期にエストロゲンが急激に低下すると、多くの身体的症状が現れます。以下が代表的な症状です:

  • 外陰部の萎縮:エストロゲン不足により、外陰部が乾燥し、痛みやかゆみが生じることがあります。
  • GSM(閉経関連泌尿器性器症候群):骨盤底筋が緩みやすくなり、妊娠・出産、更年期、肥満や加齢が原因で排尿障害や膣の不快感が発生することがあります。
  • 皮膚の変化40-60歳ではエストロゲン低下により皮膚の弾力が低下し、肌のハリが30%ほど減少すると言われています。
  • 多様な症状: 生殖機能の低下に加え、ホットフラッシュ(突然の体温上昇と発汗)、不眠、動悸などが起こり、個人差が大きいのも特徴です。これらは月経の有無に関わらず、更年期に特有の多彩な症状として現れます。

加えて、更年期を過ぎた60歳以降になると、エストロゲンの分泌量が低下する女性に対し、男性のエストロゲン値が女性よりも高くなる場合もあります。

 

更年期治療を検討する前に

更年期治療を行う前には、乳がんや子宮内膜がんのチェックが推奨されます。これにより、ホルモン補充療法を安全に進めるためのリスク評価が可能です。

 

更年期の治療と症状管理

更年期にはエストロゲンの低下により、身体や心に様々な変化が現れます。これらの症状を和らげるため、ホルモン補充療法(HRT)をはじめとした治療法が利用されます。具体的な治療法やケア方法は以下になっています。

  • 1.HRTによるホルモン補充

更年期症状の代表的な治療法としてホルモン補充療法(HRT)があります。特に性器萎縮にはHRTが有効で、エストロゲンの減少による不快症状を改善するために、ル・エストロジェルディビゲルといった経皮吸収のエストロゲン剤が使用されます。これは、かつてのプレマリンに代わり、体への吸収が優れた新しい選択肢です。また、天然型黄体ホルモンであるエフメノはGABA効果もあり、睡眠改善にも役立つとされています。

  • 2. サプリメントとプラセンタ療法

閉経後5年以内に見られることの多い知覚異常(感覚の異常)には、プラセンタやサプリメントが効果的です。これらは神経系のサポートやホルモンバランスの調整に役立つとされています。また、更年期の症状が強い場合でも、50歳を超えると低用量ピルの使用は禁忌となりますので、適切な治療法を選ぶことが重要です。

  • 3. 更年期症状とうつ症状の鑑別

更年期の不快症状は、うつ病の症状と似ている場合があり、鑑別が必要です。例えば、体重減少や食欲低下が続く場合、うつ病の可能性も考えられるため、医師による問診票を用いた確認が有効です。また、甲状腺機能や、カルシウム拮抗薬の使用歴についても確認し、症状の原因を慎重に見極めることが大切です。

  • 4. その他の治療法とカウンセリング

更年期の症状が強い場合、HRTの他にも、精神療法や代替医療(漢方薬やサプリメント)、およびカウンセリングが役立ちます。これらは、メンタル面のケアや生活習慣の改善に繋がり、より良い生活の質を保つための支えとなります。

 

毛細血管と亜鉛の関係

加齢に伴い毛細血管の数が減少し、特に40-49歳を境にしてその減少が顕著になると言われています。低酸素状態では毛細血管の新生が促されますが、血管が新しく作られる一方で、がんなどのリスク要因とも関連しています。また、亜鉛は毛細血管や血流に関わる大切な要素であり、亜鉛不足により血流が滞ることがあります。特に、血液検査上、明確な亜鉛欠乏が見られる場合や、潜在的な亜鉛欠乏症状が見られる場合は、亜鉛サプリメントの補給が推奨されます。

亜鉛欠乏かどうかは血液検査をすればすぐにわかります。また、亜鉛とマグネシウムの比率を判断することも重要です。私も亜鉛が不足がちなので牡蠣を食べた日以外は亜鉛サプリを摂取しています。血管新生も少なすぎても老化、多すぎるとがんのリスクとなるのでバランスが難しいところですね。栄養外来では亜鉛の血中濃度の評価も行っています。気になる方はお気軽にご相談ください♪

まとめ

更年期はホルモンバランスの変化による多様な症状が現れる時期です。症状に応じてホルモン補充療法やプラセンタ、亜鉛の補給などを組み合わせて対処することで、生活の質を向上させることが可能です。医師の指導の下、適切な治療とケアを続けることが、更年期の症状を穏やかに過ごすための鍵となります。

 

 

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