女性にクレアチンが必要な3つの理由:エネルギー、筋力、そして集中力

   

クレアチンは、筋肉だけでなく、脳や骨の健康を支える隠れたヒーローとも言える栄養素です。特に女性にとっては、加齢やホルモンバランスの変化に伴い不足しがちな成分で、運動パフォーマンスの向上、筋肉量の維持、さらには集中力や記憶力の向上に役立つことが分かっています。本記事では、女性がクレアチンを取り入れることで得られる具体的なメリットと、その効果を最大化する方法、注意点について解説します。

                         

クレアチンは、筋肉や脳にエネルギーを供給し、短時間・高強度の運動パフォーマンスを大幅に向上させる栄養素です。さらに、筋肉の成長を促進し、トレーニング後の回復を助けるだけでなく、加齢による筋力低下や疲労感の軽減、さらには認知機能のサポートにも効果を発揮します。この小さな分子がもたらす健康効果を知れば、日常生活やトレーニングの質を一段と高められるでしょう。

 

クレアチンの働き

1. エネルギー供給のサポート

クレアチンは筋肉中に蓄えられ、主に「クレアチンリン酸」*として存在します。このクレアチンリン酸が、ATP*(アデノシン三リン酸)というエネルギー源を再生する役割を担います。短時間・高強度の運動(スプリントやウェイトリフティングなど)で素早くエネルギーを供給し、パフォーマンスの向上に貢献します。

2. 筋肉の成長を促進

クレアチンは、筋肉が成長しやすい環境を整えます。また、筋肉のタンパク質合成を促進し、トレーニングの効果を高めるため、筋力や筋肉量の増加にも役立ちます。

3. 回復のサポート

トレーニング後の筋肉の回復を助け、筋肉疲労の軽減にも効果的です。クレアチンは、炎症や酸化ストレスを抑える働きも持っているため、筋肉のダメージ修復や、筋肉痛の緩和にも役立ちます。

4. 脳機能の向上

クレアチンは脳にも存在し、脳細胞のエネルギー供給をサポートするため、集中力や記憶力の向上が期待されることもわかっています。特に、高齢者や過剰なストレス下にある人で、脳機能を支える効果が注目されています。

5. 加齢に伴う筋肉量減少の抑制

クレアチンは、年齢に伴う筋力や筋肉量の減少(サルコペニア*)の進行を遅らせる効果も期待されています。年齢に伴い低下しがちな筋肉の機能をサポートし、健康維持に役立ちます。

これらの働きにより、クレアチンは特にアスリートやトレーニングを行う人々のサプリメントとして多く使用されていますが、高齢者や集中力を必要とする人にとっても有用な成分です。

*ATP(アデノシン三リン酸):「生命のエネルギー通貨」とも呼ばれ、筋肉の収縮や細胞の増殖、植物の光合成など、さまざまな生命活動に必要なエネルギーを提供します。ATPは、アデノシンという物質に3つのリン酸基が結合した構造を持ち、エネルギーを蓄えたり放出したりすることで、生体内の化学反応を支えています。
*クレアチンリン酸:肝臓や腎臓で合成され筋肉中に貯蔵されているエネルギー物質で、運動時のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)の迅速な再生産を担います。筋肉が収縮する際、ATPはエネルギーを放出してADP(アデノシン二リン酸)になりますが、クレアチンリン酸がADPにリン酸基を提供することで、素早くATPを補充できます。このエネルギー供給システム(ATP-CP系)は、短距離走や重量挙げなどの瞬発的な運動で重要な役割を果たします。ただし、持続時間は約8秒と短く、それ以上の運動では他のエネルギー供給経路が必要になります。
*サルコペニア:加齢や不活動により筋肉量、筋力の低下に伴う様々な病態です。寝たきりの最大の原因の転倒骨折の根源とも言えます。現在日本ではサルコペニアの予防が健康寿命の延長の鍵となっています。
 

女性に適したクレアチンのとりかた

クレアチンは、特に女性において筋力やパフォーマンスの向上に効果があるとされ、トレーニングの種類や体調に応じた投与戦略が役立ちます。

筋力・パワーの向上

 クレアチンはトトレーニング経験の有無を問わず、女性の筋力とパワーの向上に寄与します。また、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と併用すると、その効果がさらに高まります。
クレアチンの補助により、トレーニング中に筋肉にかかる刺激が増し、適応が進みます。これは、クレアチンが筋肉に素早くエネルギーを供給するため、短期的な運動パフォーマンスが向上し、より高い強度でトレーニングを行うことができるためです。

 

投与方法

目的に応じた投与方法を採用することで、クレアチンの効果を最大限に引き出すことが可能です。

短期的なパワー向上を目指す場合
  1. 短期投与: 短期投与: クレアチンを体重1kgあたり0.5gずつ、1日4回に分けて5日間摂取すると、筋肉内のクレアチン貯蔵量が増え、短期間でのパワー向上が期待されます。
トレーニングを段階的に構成した場合
  1. 初期投与: トレーニングの強度が高い時期に、1日5gを4回に分けて7日間摂取し、その後4週間は1日2gに減らす方法。これにより、集中した筋力トレーニング期間に対応するためのエネルギー貯蔵が確保できます。
日々の健康維持のため
  1. 維持摂取: 3~5gを継続的に摂取し、日常的な体力維持や骨・筋肉のサポートを図ります。クレアチンは、日常的な疲労感の軽減や筋肉の保護にも役立つとされています。

 

食品で摂る場合
 
  1. 以下の食品はクレアチンを自然に摂取するのに適しています。ただし、加熱により減少するため、刺身など生の状態で摂取するのがおすすめです。特に魚類(ニシン、サーモン)は刺身などの形で生で食べることができるため、クレアチン摂取に効果的です。肉類は安全のために適切に調理する必要がありますが、それでも良いクレアチン源となります。

 

食材 クレアチン含有量 (100gあたり)
ニシン 0.65~1.0g
鶏肉 0.73g
豚肉 0.55g
牛肉 0.45g
サーモン 0.45g

更年期後の女性への利点

年齢とともに筋肉量や骨密度が減少しやすくなる、更年期後の女性にとってもクレアチンは有益です。

  • 抗炎症作用と酸化ストレスの軽減: クレアチンは、炎症や酸化ストレスを抑え、骨吸収を抑制することで骨密度を維持します。また、骨を形成する細胞(オステオブラスト)の活動を促進するため、骨の健康に効果的です。
  • 筋肉の維持: クレアチンは筋肉細胞の修復や成長を促進するサテライト細胞の活性を高め、筋肉の成長因子IGF-1の増加にも寄与します。これにより、レジスタンストレーニングの有無にかかわらず、筋肉の整合性と機能が向上します。

 

注意すべきこと

クレアチンの働きについて見てきましたが、全ての人にとって有益とは限りません。

クレアチニンは筋肉の代謝によって生成される老廃物で腎臓で排泄されるため、筋肉量が多い人・腎機能が低下している人で高値になり、高齢者や栄養状態が悪い人など筋肉量が少ない人や特定の筋肉の病気で低値を示します。

クレアチニン値が基準値より高い場合、腎機能低下による病的なものの場合、クレアチニンのサプリメントは腎機能悪化を招く可能性があるため適応外となります。そのため、事前の腎機能評価がお勧めです。以下は一般的な腎機能評価項目です。

  1. eGFR(推算糸球体濾過率): これは年齢や性別を考慮してクレアチニン値から計算される腎機能の指標です。60 mL/min/1.73m²を下回る場合は、腎機能低下を疑う必要があります。
  2. シスタチンC: これは筋肉量の影響を受けない腎機能マーカーです。アスリートや筋肉量の多い方の腎機能評価に特に有用で、この値が高ければ腎機能低下が示唆されます。
  3. 尿タンパク検査 :腎臓の働きを直接反映する検査です。陽性の場合は腎臓に何らかの障害が起きている可能性を示唆します。

サプリメントは自己判断で開始せずに、事前にご自身の状態をチェックした上で摂取するのが安心です。どの項目も一般的なので血液検査で評価してから開始してみてください。

 

 

本記事は、女性アスリートのパフォーマンス生理学者であり、栄養科学者として活躍するStacy T. Sims, PhDの研究内容を参考に作成しました。運動をするのパフォーマンス向上や健康管理はもちろん、女性の高齢化における筋力維持のヒントにもなる内容となっています。プロテインもクレアチニンも、摂取方法を間違えると腎機能に影響を及ぼす危険があるので気をつけながら恩恵を受けましょう。

 

 

参考文献

  • Kreider, R. B., et al. (2017). International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1), 18.

  • Branch, J. D. (2003). Effect of creatine supplementation on body composition and performance: a meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise, 35(5), 948-954.

  • Cooper, R., Naclerio, F., Allgrove, J., & Jimenez, A. (2012). Creatine supplementation with specific view to exercise/sports performance: an update. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 9(1), 33.

  • Forbes, S. C., & Candow, D. G. (2018). Differences in muscle strength and body composition after creatine supplementation in young adults. European Journal of Applied Physiology, 118(3), 539-549.

  • Devries, M. C., & Phillips, S. M. (2014). Creatine supplementation enhances isometric strength and body composition improvements in older adults. Journal of Gerontology: Medical Sciences, 69(6), 699-708.

  • Gualano, B., Roschel, H., Lancha Jr, A. H., Brightbill, C. E., & Rawson, E. S. (2012). In sickness and in health: the widespread application of creatine supplementation. Amino Acids, 43(5), 1775-1785.

  • Rawson, E. S., & Venezia, A. C. (2011). Use of creatine in the elderly and evidence for effects on cognitive function in young and old. Amino Acids, 40(5), 1349-1362.

 

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