間欠的断食実践ガイド2:安全に取り組むためのポイント

間欠的断食(インターミッテントファスティング)は、一定の時間だけ食事をとり、残りの時間は断食する食事法です。この方法により、食事の時間枠内で必要な栄養を摂り、それ以外の時間で体内のエネルギーを効率よく燃焼させることを目指します。間欠的断食は、体重管理や慢性疾患の予防、消化器系や免疫機能の改善など、幅広い健康効果が期待されています。断続的断食には、多くの研究と議論があり、特定の人には適している一方、完全に避けるべき人もいます。ほとんどの人にとって、断食は大きなリスクなく実施できますが、一部のケースでは医療専門家と協力して最適なアプローチを決めることが重要です。

 

 断続的断食が適応となる人

  • 前糖尿病および2型糖尿病の人
    断食が血糖マーカーに与える影響から、糖尿病や前糖尿病の人にとって、断食が有益である可能性があります。インスリン感受性やインスリン抵抗性、ベータ細胞の応答性、空腹時血糖値、空腹時インスリンレベルの改善が見られます。

  • 体重過多の人
    断食による減量効果は、カロリー制限と同等に効果的であるという合意が得られています。一部の研究では、断食がカロリー制限よりも維持しやすい可能性が示されています。また、一部の断食方法では、90%以上の高い遵守率が報告されています。

  • 心代謝リスクがある人
    断続的断食は、BMI、インスリン感受性、血糖値、トリグリセリドの改善に効果があり、心代謝疾患のリスクを低減します。

  • 自己免疫疾患を抱える人
    断食は腸内細菌叢の変化による免疫および炎症マーカーの改善に効果があるとする研究があり、自己免疫疾患に対しても断食が有効である可能性があります。

  • 特定の遺伝的マーカーや病歴を持つ人
    時間制限食や断食が認知症などの疾患に与える影響についての結論はまだ出ていませんが、これは新たな研究分野として注目されています。

断続的断食が有効な可能性がある消化器系の問題を抱える人

断食による腸の休息は、膨満感や消化不良、排泄問題の改善に繋がることが示されています。また、小腸内細菌過増殖症*(SIBO)や胃食道逆流症*(GERD)の改善をサポートする臨床的証拠もあります。

 

と、断食療法の良い面ばかり話題になりがちですが、断食をしては危険な人も結構います。以下に簡単にまとめました。

間欠的断食が適さないケース

1. 糖尿病(特に低血糖になりやすい・インスリン治療を受けている場合)
  • 血糖値の急激な変動が起こりやすく、低血糖リスクが高いため、間欠的断食も危険です。
2. 腎機能低下(腎不全や慢性腎疾患)
  • 電解質バランスや脱水のリスクがあるため、腎臓に負担がかかる間欠的断食も避けるべきです。
3. 肝機能低下(肝硬変や重度の肝障害)
  • 肝臓が血糖の調整や解毒を担うため、間欠的断食で低血糖や毒素の蓄積が起こりやすく危険です。
4. 副腎疲労や副腎機能不全(アジソン病)
  • 血糖値を安定させるホルモン分泌が難しいため、間欠的断食がさらなるストレスとなり、体調を悪化させるリスクがあります。
5. 摂食障害の既往歴(過食症や拒食症など)
  • 間欠的断食が摂食障害の再発を引き起こすトリガーとなるため、精神的なリスクが高まります。
6. 妊娠中、授乳中、または妊娠を目指している女性
  • 栄養が必要なため、間欠的断食でもカロリー不足が胎児や乳児の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。
7. 成長期の子供や青少年
  • 成長に必要な栄養が不足する可能性があり、発育に悪影響を与えるため、間欠的断食も避けるべきです。
8. 貧血や低栄養状態
  • 栄養不足が悪化しやすく、体調不良や疲労が増す可能性があるため、間欠的断食も推奨されません。
9. がん患者(特に治療中)
  • 治療に必要な栄養状態の維持が重要で、間欠的断食でも体力が低下し、治療耐性が弱まるリスクがあります。
10. 感染症にかかっている人
  • 感染症から回復するためにはエネルギーと栄養が必要で、間欠的断食でも免疫力が低下し、治癒が遅れる可能性があります。
11. 甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症
  • 間欠的断食が甲状腺ホルモンのバランスに影響を与え、症状が悪化するリスクがあるため、慎重に対応が必要です。
12. 低血圧や血圧の不安定な人
  • 間欠的断食による水分不足や血糖の変動が、さらに血圧低下を引き起こし、めまいや失神のリスクが高まります。
13. 骨粗しょう症
  • 栄養不足によって骨密度が低下する可能性があり、間欠的断食も骨粗しょう症を悪化させるリスクがあります。
14. 特定の薬を定時で服用している人
  • 間欠的断食が薬の吸収に影響し、効果の変動が起こる可能性があるため、注意が必要です。

これらの疾患や状態を持つ人は、間欠的断食でもリスクがあるため、慎重な対応が求められます。断食や食事制限を検討する際は、医師や専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。

 

間欠的断食の取り組み方とポイント

  • 1. スタート方法

間欠的断食はまず12時間の断食と12時間の食事時間を確保する「12:12」から始めるのが簡単です。食事時間内にバランスの取れたホールフード(未加工食品)を摂り、断食時間中には十分な水分補給を心がけましょう。断食中のコーヒーやハーブティーも許可されています。

  • 2. 食事のタイミング

間欠的断食は体内時計(サーカディアンリズム)にも影響を与えるため、朝の食事をしっかり摂り、夕食を軽めにするのが理想とされています。この方法で、血糖値やホルモンバランスが安定しやすくなります。

  • 3. 食事内容と量

断食後の食事は、低脂肪のタンパク質、モノ不飽和脂肪酸、食物繊維を含む炭水化物をバランスよく摂ることが勧められます。特に、ホールフードである野菜、果物、全粒穀物を選ぶことで、栄養価を確保しながら間欠的断食の効果を最大限に引き出します。

単に食事を抜けば良いのではありません。
断食後は腸が敏感になっているからこそ、体に負担が少ない食材を選別する必要があります!
  • 4. 食欲コントロールと空腹対策

間欠的断食を続けると体が空腹感に慣れ、管理しやすくなります。十分な水分を摂取し、短い断食から始めることで空腹のストレスを和らげ、散歩や瞑想を取り入れると精神的にも楽になります。強いストレスを感じてしまう場合は一度中止し、かかりつけ医に相談しましょう。

 

間欠的断食の効果とリスクに関する考察

  • 1. レジリエンス(回復力)の向上

間欠的断食は細胞がストレスに耐える力を高めると考えられ、健康な細胞の維持や代謝機能の改善に役立ちます。また、断食中に代謝率が上がり、蓄えた脂肪をエネルギー源として使用するため、体重管理やエネルギーレベルの向上にも貢献します。

 

  • 2. 筋肉量の維持

間欠的断食中には成長ホルモンの分泌が促進されるため、筋肉量の維持や増強に貢献する可能性があります。食事時間には適切な栄養素を摂取し、断食中も適度な運動を取り入れることで筋肉の減少を防ぐことができます。

一方、筋肉量が減少するリスクのある断食方法については、いくつかの研究で指摘されています。特に、過度なカロリー制限や長期間にわたる断食は筋肉量の減少を引き起こす可能性があります。

 長期間断食と筋肉量の減少

長期的なカロリー制限や絶食により、体はエネルギーを維持するために筋肉を分解し始めることがあります。断食によるエネルギー摂取不足が続くと、体はまずグリコーゲンを消費し、その後に脂肪と筋肉をエネルギー源として利用する「異化作用」が起こります。この際、筋肉が分解され、筋肉量が減少する可能性が高くなります。長期間にわたる連続した断食は特に注意が必要で、通常の間欠的断食とは異なり、筋肉減少を招くリスクがあるとされています。

 毎日長時間断食する方法のリスク

毎日16時間以上の断食を行う時間制限食も、筋肉量減少のリスクが高まると指摘されています。例えば、Schoenfeld & Aragonの研究では、16:8時間の時間制限食は筋肉量の維持に有益である可能性がある一方、極端な断食時間(例えば20時間断食・4時間食事)を毎日行うと筋肉の異化が起こりやすいとされています。これは、断食中に成長ホルモンが分泌されるものの、長時間の断食で栄養不足が進行すると、筋肉の維持が難しくなるためです。16時間以上の断食が毎日続くと、エネルギー供給が不足し、筋肉分解を引き起こす可能性があるため、慎重な計画が求められます。

 カロリー制限が筋肉量に与える影響

間欠的断食は、食事時間内に十分なタンパク質とカロリーを摂取することで筋肉量を維持しやすくなります。しかし、極端なカロリー制限を伴う断食方法では、筋肉分解が進みやすいのも確かです。このため、断食を行う際には、食事時間内に十分なカロリーとタンパク質を摂取し、栄養バランスを確保することが重要です。長期間とは、一般的には数日間から数週間にわたる連続した断食期間を指すことが多いです。具体的には、3日以上の断食が長期間と見なされることがあり、特に5日以上の連続断食は筋肉量の減少リスクが高まるとされています。これに対し、1日から2日の短期的な断食は、適切な栄養管理を行えば筋肉量への影響が少ないとされています。

筋肉量減少を防ぐための工夫

筋肉量の減少を防ぐためには、断食時間を短くし、食事時間内で適切なタンパク質量を摂取することが重要です。McGlory et al.(2017)の研究によれば、断食中でも1日1.6g/kgの体重あたりのタンパク質摂取が筋肉維持に有効であることが示されています。さらに、運動と組み合わせることで、断食中の筋肉量減少を最小限に抑えることが可能です。

 

  • 3. 長期的な影響と今後の研究

間欠的断食に関する長期的な研究はまだ少ないため、さらなる研究が期待されます。現時点では、間欠的断食が体重管理や慢性疾患の予防に役立つ可能性が示唆されていますが、すべての人に効果的とは限りません。医師に相談しながら、体調やライフスタイルに合わせた断食方法を見つけることが大切です。

まとめ

間欠的断食は、比較的簡単に取り入れられるライフスタイルであり、体重管理や慢性疾患の予防に役立つ可能性があります。費用も少なく柔軟に取り組めるため、誰でも挑戦しやすい方法ですが、健康状態に応じて慎重に取り入れることが必要です。医療専門家と相談しながら、適切な断食方法と食事バランスを取り入れ、健康的な生活を目指しましょう。

特に今の栄養状態を知らずに急に断食をしてしまうのは危険です。くれぐれも自己判断で始めないようにお気をつけください。わからないことがあればShieの栄養外来でもサポートいたしますのでご相談くださいね。

 

*小腸内細菌過増殖症(SIBO):小腸内で通常よりも多くの細菌が繁殖し、消化不良や腹痛、ガス、下痢・便秘などの症状を引き起こす状態

*胃食道逆流症(GERD):胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、胸やけや呑酸(酸っぱい液体が口に上がる)などの症状を引き起こす疾患

 

関連記事

間欠的断食実践ガイド1:イントロダクション

間欠的断食実践ガイド3:種類とカロリー制限との違い

参考文献:

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