便利な現代社会に潜む栄養不足問題

 
現代の便利な食生活には、栄養不足やバランスの偏りという問題が潜んでいます。機能医学の観点から、日々の栄養バランスを整え、健康を支えるための基本的なアプローチを紹介します。
 
現代人の栄養不足
手軽に購入できる加工食品やファストフードが豊富な一方で、私たちの栄養バランスは悪化しています。エネルギー(カロリー)摂取量は十分でも、必要なビタミンやミネラルが不足している「隠れ栄養不足」が増えています。
以下は日本人が不足しがちな栄養素の表です。
 
	
		
			| 栄養素 | 推奨量 | 不足している割合 | 主な原因 | 
	
	
		
			| たんぱく質 | 1.6-2.0/kg | 約30% | 食事内容の偏り、摂取量不足 | 
		
			| 食物繊維 | 男性20g以上、女性18g以上 | 約70% | 野菜・果物・穀物摂取不足 | 
		
			| ビタミンD | 5μg- | 約50%以上 | 日光を浴びる機会の減少、魚摂取量低下 | 
		
			| カルシウム | 成人で650mg | 約60% | 小魚などカルシウム豊富な食品の摂取不足 | 
		
			| マグネシウム | 男性370mg、女性290mg | 約40% | 海藻や豆類の摂取不足 | 
	
 
 
現代人の栄養不足が増えている要因
	- 成人の60%以上が超加工食品*を日常的に摂取。
- 食品の質と栄養価の変化
	
		- 長距離輸送:収穫から食卓までの時間が長くなると栄養価が低下しやすい。
- 過度な加工処理:加工食品の製造過程で栄養素が失われやすい。
- 土壌の変化:栄養の少ない土壌で育った作物の栄養価も低い。
 
- 生活習慣の影響
	- 不規則な食生活
- ストレス過多
- 運動不足
 これら全て栄養吸収に影響します。例えば、ストレスが増えるとビタミンCやB群が過剰に消耗されることが知られています。
 
加工食品と超加工食品
加工食品
 
自然な食品にシンプルな加工を施し、保存性や食べやすさを向上させたもの。
例:
	- 冷凍野菜、パック豆腐、ヨーグルト、パン(基本材料のみ)
- 缶詰食品(砂糖や塩が控えめなもの)
特徴:
	- 添加物の使用は控えめまたはなし。
- 主に保存性や風味向上が目的。
- 栄養価が比較的保たれている。
超加工食品
工業的に高度な加工が施され、多くの人工成分(添加物や加工原料)を含む食品。
例:
	- スナック菓子、清涼飲料水、インスタント食品、加工肉(ハム、ソーセージ)
- フレーバー入りのシリアル、菓子パン
特徴:
	- 添加物が多い(保存料、着色料、香料、乳化剤など)。
- 自然な食材が少なく、精製された砂糖や油脂が中心。
- 栄養価が低く、カロリーが高い傾向。
- 食べやすさや依存性を高める工夫がされている。
違いのまとめ
	
		
			|  | 加工食品 | 超加工食品 | 
	
	
		
			| 加工の度合い | 軽度(保存や調理の簡便化) | 高度(工業的加工が主体) | 
		
			| 成分 | 自然な食品が主、添加物は少ない | 添加物や人工成分が多い | 
		
			| 栄養価 | 栄養価が保たれている | 栄養価が低く、高カロリー | 
		
			| 健康への影響 | 健康に悪影響が少ない | 肥満や生活習慣病のリスクが高まる | 
	
 
 
 
栄養不足のサイン
	- 疲労感や気分の不調:慢性的な疲労、気分の落ち込み、イライラの増加。
- 身体の不調:筋肉のこわばりや便秘、免疫力低下など。
- 見た目の変化:肌トラブル、髪や爪の脆さ、むくみなど。
 これらのサインが出ている場合、栄養状態の見直しが有効です。
 
栄養改善のためのアプローチ
1. 食事の見直し
	- 地元の新鮮な食材の利用:地域で採れた旬の食材には高い栄養価が期待できます。
- 発酵食品の摂取:納豆、味噌、キムチなどの発酵食品が腸内環境を整えます。
2. スマートな栄養補給
	- サプリメントでの補充:ビタミンやミネラルの不足には、適切なサプリメントを活用。
- 定期的な栄養評価:栄養状態を定期的に確認し、必要な栄養素を見直すことが大切です。
3. ライフスタイルの改善
	- 規則的な食事時間:体内時計に合わせた食事が栄養吸収に有益です。
- 良質な睡眠:ホルモンバランスに影響し、食欲や代謝の安定をサポート。
- 運動習慣:代謝を高め、栄養素の効率的な利用を促進します。
 
個別化された栄養プログラムの重要性
体質や生活環境、目標が一人ひとり異なるため、一般的なアドバイスだけでは十分とはいえません。個別化された栄養プログラムによって、効果的な改善が期待できます。
 
当院での取り組み
	- 初期評価:食生活や体調の分析、生活習慣をカウンセリング。必要に応じて検査で評価。
- 個別プランの作成:目標に合わせた計画を作成。
- 定期的な見直し:主に3?6ヶ月に1回の評価にて健康状態の最適化を目指します。
 
健康への第一歩
少しずつでも栄養バランスを意識した生活を取り入れることで、健康維持に繋がります。
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参考文献