睡眠障害と腸内細菌の関係:快眠の鍵は腸内細菌が握ってる!

  

 

睡眠は心身の健康維持において重要な役割を果たしています。最近の研究で、腸内マイクロバイオーム(腸内細菌群)と呼ばれる腸内の微生物が睡眠に影響を与える可能性が示唆されています。この発見により、腸内フローラを調整する「微生態療法(Microecological Therapy)」が、睡眠障害の新たなアプローチとして注目されています。

 

睡眠の質と腸内マイクロバイオーム

OSA*(Obstructive Sleep Apnea、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)とは、睡眠中に気道が部分的または完全に塞がることで呼吸が断続的に止まる疾患です。これにより睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下、高血圧、心血管疾患などのリスクが高まることがわかっています。OSA患者の腸内フローラを見ると腸内環境が健康な人と異なることがわかっています。具体的には、腸内細菌の多様性が低下し、バクテロイデスが減少する一方で、フィルミクテスが増加する傾向があります。また、重症のOSA患者では、フソバクテリウムやラクトクロストリジウムといった特定の悪玉細菌が増え、腸のバリア機能が弱まり炎症が起きやすくなることが報告されています。これにより、腸内の環境が悪化し、さらに睡眠の質が低下する悪循環に陥りやすくなります

 

不眠症と腸内フローラの変化

不眠症も腸内環境に影響を与えることがわかっています。慢性的な不眠症患者の腸内フローラでは、ストレスホルモンとともに炎症性サイトカインであるIL-1βが増加し、腸内のラクトバシラス属やストレプトコッカス属の細菌のバランスが崩れ腸内炎症が起きやすい状態になることが確認されています。このような腸内フローラの変化は、睡眠の質の低下や免疫機能の低下と関連しています。

 

微生態療法:腸内フローラを整える治療法

微生態療法は、腸内細菌のバランスを整えることで睡眠の質を改善することを目的とした治療法です。具体的には、プロバイオティクス(善玉菌)を摂取したり、地中海式の食事法を取り入れることで腸内環境を改善します。

  • プロバイオティクス

プロバイオティクスは腸内に一時的にとどまる善玉菌で、腸内フローラのバランスを整える効果があります。研究によると、Lactobacillus gasseriの摂取は入眠時間を短縮し、睡眠の質を向上させる効果があるとされています。また、Lactobacillus casei Shirota株も睡眠の維持に効果があることが示されています。このように、特定のプロバイオティクスを摂取することで、睡眠改善が期待できることが示唆されています。

 

  •  地中海式食事

地中海式食事は、野菜、果物、豆類など抗酸化成分が豊富な食材を中心とした食事法で、睡眠の質向上にも関連があります。ある研究によると、地中海式食事に従う人々は、より長い睡眠時間と良好な睡眠の質を得られる傾向があることが報告されています。また、この食事法は、入眠時間の短縮や不眠症状の軽減にも効果があるとされています。

 

地中海式食事と睡眠健康

  •  睡眠時間と不眠症状の改善

2018年の研究では、地中海式食事を実践することで、睡眠時間が適切な範囲に収まり、不眠症状が少なくなることが確認されました。動脈硬化を持つ2000人以上の成人を対象とした調査によると、地中海式食事を実践している人々は、不眠のリスクが低く、良好な睡眠を得られる傾向が強いことが示されています。この食事法が、健康な睡眠パターンを維持するための有効な手段であることが示唆されています。

  •  体重と睡眠の質の関係

2019年のイタリアでの調査によると、地中海式食事に従っている人々は睡眠の質が良いことが確認されています。特に標準体重の人々は、地中海式食事を取り入れることで寝付きが早くなる(睡眠潜時が短縮される)効果がありました。しかし、肥満の人には同様の効果が見られなかったため、体重と睡眠の関係性も考慮すべきかもしれません。

  • 性別による違い

地中海式食事が睡眠に与える効果には性別差があることもわかっています。2021年の調査によると、女性において地中海式食事の遵守度が低い場合、睡眠時間が短くなる傾向が見られ、果物や野菜、豆類の摂取不足がその原因の一つであるとされています。また、若年男性が果物や野菜の摂取量が少ない場合、女性よりも不眠症のリスクが高くなることも報告されています。これらの結果から、性別や年齢を考慮した食事の見直しにより、さらに睡眠改善効果を高められるかもしれません。

 

機能医学的アプローチの重要性

腸内マイクロバイオームと睡眠の関連性が明らかになりつつある中、機能医学では患者の睡眠障害を早期に発見し、生活習慣の改善を提案することが推奨されています。医師と患者の密な連携により、睡眠の質の低下が見られる場合には、腸内環境の改善や行動療法の導入が効果的です。こうしたアプローチにより、睡眠問題が生活習慣に起因する場合、行動療法や生活習慣の見直しによって悪影響を予防・改善することが期待されています。

 

まとめ

腸内マイクロバイオームと睡眠には密接な関係があり、腸内フローラのバランスを整えることで睡眠の質が改善される可能性があります。微生態療法としてプロバイオティクスや地中海式食事が注目され、腸内環境を整えることで、より良い睡眠が期待できるとされています。腸内マイクロバイオームと睡眠の関係に関する研究が進むにつれ、腸内環境の改善が睡眠障害の治療に有効な手段となっていくでしょう。

今回の機能性医学の記事でも地中海料理推しでしたね。腸内環境が体の全ての機能に関与しているのは容易に理解できますが、改めて睡眠に絞った研究というのは面白いですね。色々の要因関わる睡眠の質だからこそ、まず免疫の要の腸を整えてブレない睡眠の質を確保したいですね。

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