衣類のマイクロプラスチック汚染と肌の健康

 

マイクロプラスチックとは、5mm以下の小さなプラスチック粒子で、環境中に広く存在し、生態系や人間の健康に悪影響を及ぼす可能性が懸念されています。衣類に使われる合成繊維からは、洗濯や摩擦によって目に見えないほど小さなマイクロプラスチックが放出されています。これらが肌に接触することにより皮膚に影響が出ることが報告されています。ここでは、マイクロプラスチックが皮膚に及ぼす主な影響と対策について説明します。

 

皮膚への刺激

研究によると、微細なプラスチックの粒子が肌表面に蓄積すると、摩擦によって肌を傷つけることがあり、軽度から中度の皮膚刺激が生じる場合があります。また、肌に長時間接触することにより、物理的な刺激やかゆみを引き起こす可能性があります。敏感肌の人は特に、こうした微小な粒子に対してアレルギー反応や炎症を起こしやすいとされています。

 

皮膚バリア機能の低下

肌のバリア機能は、外部からの有害物質やアレルゲンの侵入を防ぐ役割を果たしていますが、マイクロプラスチックが肌に付着することで、このバリア機能が低下する可能性があります。バリア機能が損なわれると、アトピー性皮膚炎や乾燥肌が悪化するリスクが高まります。特に、バリアが弱い人ほどマイクロプラスチックによる物理的ストレスを受けやすく、外部からのアレルゲンや化学物質の侵入がしやすくなると報告されています。

 

化学物質による皮膚毒性

合成繊維には着色剤や難燃剤などの化学物質が使われており、これらが微小なマイクロプラスチックに付着して肌に移行する可能性があります。肌に吸収されると、これらの化学物質が炎症やアレルギー反応を引き起こすことが懸念されています。マイクロプラスチックは、化学物質の媒介物として働きやすく、肌からの吸収が進みやすいため、特に長時間の着用が続くとそのリスクが高まります。

アクネや毛穴の詰まり

非常に小さなマイクロプラスチックの粒子は、肌の毛穴に入り込むリスクがあり、毛穴を塞ぐことで皮膚の呼吸を妨げ、アクネや吹き出物を引き起こす可能性があります。また、蓄積されたマイクロプラスチックが炎症を誘発し、皮膚炎の発症リスクの増加にもつながります毛穴が詰まることで皮脂の排出が阻害され、アクネ菌の繁殖が進みやすくなるため、特に脂性肌の人は注意が必要です。

長期的な健康リスク

マイクロプラスチックは、皮膚を通じて体内に入り、長期的には内臓や免疫系にも影響を及ぼす可能性が示唆されています。内分泌系の撹乱や免疫系の異常など、皮膚以外にも悪影響が広がる可能性があり、体内に蓄積されるとさらに健康リスクが高まる可能性があります。マイクロプラスチックの一部は内分泌撹乱物質*(EDCs)として作用し、ホルモンバランスに悪影響を与える可能性も指摘されています。関連記事*内分泌攪乱化学物質(EDC)のリスクと安全な代替品の選び方

 

対策と予防方法

マイクロプラスチックの影響を軽減するために、以下の対策が推奨されます:

  • 天然素材の衣類を選ぶ綿やリネンなど、天然素材の衣類はマイクロプラスチックの発生を抑えやすく、肌にも優しいとされています。
  • 洗濯時の工夫:マイクロプラスチックの放出を抑えるため、低温での洗濯や柔らかい洗剤の使用が効果的です。また、洗濯機にフィルターを設置すると、繊維くずが流出するのを抑えられます。
  • スキンケアの強化肌のバリア機能を高めるために、保湿ケアを徹底し、外部からの刺激に対する抵抗力を維持することが大切です。

まとめ

衣類から発生するマイクロプラスチックは、肌に刺激を与え、バリア機能を低下させる可能性があるため、合成繊維の選択や洗濯方法、肌のケアに注意を払うことが重要です。特に敏感肌やアレルギー体質の人は、天然素材の衣類を選ぶことでリスクを軽減し、肌を保護することが推奨されます。

外来の患者さんで肌荒れなど皮膚トラブルの方の場合、衣類のや就寝中の寝具を低刺激なものに変えることで症状が改善する方も多いです。肌の健康を守るために身近なところから見直してみましょう。

 

関連記事

マイクロプラスチックの人体への影響と日常対策

腸と肌のつながり:健康な腸内環境がもたらす美容効果


参考文献
  1. "Microplastics as emerging contaminants: A comprehensive review" - Thompson, R. C.
  2. "Microplastics and human health: Impacts and potential solutions" - Smith, M. et al.
  3. "Dermal exposure to microplastics and nanoplastics: A health risk assessment" - Hernandez, L. M.
  4. "Environmental contaminants and skin health" - Zheng, Y.
  5. "Impact of microplastics on skin barrier and immune response" - Wang, J. et al.
  6. "Chemical contaminants in textiles: Effects on skin" - Kuroda, K.
  7. "Microplastic interactions with skin microbiota" - Rios Mendoza, L. M.
  8. "Synthetic fibers as a source of airborne microplastics" - Chen, H. et al.
  9. "Endocrine-disrupting chemicals and plastic particles in consumer products" - Oehlmann, J. et al.
  10. "Textile microfibers and environmental pollution: Recent advances" - Henry, B.

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