内分泌攪乱化学物質(EDC)のリスクと安全な代替品の選び方

 

内分泌攪乱化学物質(EDC)とは、体内のホルモンシステムに干渉し、健康リスクを引き起こす可能性がある化学物質です。ホルモンは、成長や発達、代謝、免疫など多くの体内機能を調整していますが、EDCはこのホルモンバランスを乱し、特に胎児や発育中の子ども、妊娠中の女性に悪影響を及ぼすことが懸念されています。ここでは、代表的なEDCの種類や影響、そして代替品について解説します。

 ビスフェノールA(BPA)

概要と用途

BPAはプラスチック製品や缶詰の内側コーティングに使われる化学物質です。特に硬いプラスチック(ポリカーボネート製)製品やレシートに含まれることが多く、これらが食品や飲料、皮膚を通して体内に取り込まれる可能性があります。

ポリカーボネート製製品

  • ウォーターボトル・水筒:軽くて丈夫なため、スポーツボトルや水筒などに使用されることが多い。

  • 食品保存容器:透明で耐久性があるため、一部の食品保存容器にも使われている。

健康への影響
BPAはエストロゲン(女性ホルモン)に似た作用を持ち、発育中の子どもや胎児において、ホルモンバランスの乱れや発育の異常を引き起こすリスクがあります。

代替品の提案

  • プラスチック容器の代わりに:ガラスやステンレス製の食品保存容器や水筒を使用する。
  • レシートの取り扱い:電子レシートを活用するか、直接触れることを避ける。

 


フタル酸エステル(フタル酸)

概要と用途
フタル酸エステルは、プラスチックを柔らかくするための添加剤で、食品包装材や化粧品、柔らかいプラスチック製のおもちゃなどに含まれます。

  • 食品包装材・プラスチックラップ:食品を包むラップや包装材の一部にフタル酸エステルが使われ、柔軟性と耐久性を高めています。

  • 化粧品・パーソナルケア製品:香水、ヘアスプレー、ネイルポリッシュ(マニキュア)などの美容製品では、フタル酸エステルが柔軟剤として使用され、香りや質感の持続性を高めています。

  • 柔らかいプラスチック製のおもちゃ:特に小さな子ども向けの柔らかいプラスチック製おもちゃ(ビニール製のボールや人形など)にもフタル酸エステルが含まれることがあり、弾力性を持たせるために使われています。

健康への影響
フタル酸はホルモンの働きを妨げ、特に男性の生殖機能に影響を与えるとされ、精子の質の低下や発育異常などが懸念されています。

代替品の提案

  • 食品ラップの代わりに:シリコンラップや蜜蝋ラップを使用する。
  • 化粧品の選択:フタル酸不使用の製品を選ぶ。
  • 子どものおもちゃ:天然素材の木製おもちゃやフタル酸不使用のものを選ぶ。

パーフルオロアルキル物質(PFAS)

概要と用途
PFASは撥水性や防汚性を持つ化学物質で、調理器具のコーティングや防水製品に広く使用されていますが、非常に分解されにくく、体内に蓄積されることがあります。

健康への影響
PFASはホルモンバランスの乱れや発癌リスクの上昇が懸念されており、特に免疫系や胎児の発育に影響を与える可能性が示唆されています。

代替品の提案

  • テフロン加工フライパンの代わりに:ステンレスや鋳鉄のフライパンを使用する。
  • 防水スプレーの代替:天然素材の防水ワックスやオイルを使用。
  • 食品包装材:ガラスや金属の保存容器に切り替える。

ダイオキシン

概要と発生源
ダイオキシンは、産業廃棄物の焼却や化学製品の製造過程で発生する有害物質で、脂肪組織に蓄積しやすい特性があります。身近なとこではタバコの煙や車の排気ガスにも含まれます。

健康への影響
ダイオキシンは発癌性や生殖機能の低下を引き起こすとされ、長期的に蓄積されると免疫系や発達にも悪影響を及ぼすリスクがあります。

代替品の提案

  • 食品の選び方:環境汚染の少ない地域で捕れる魚や貝を選ぶ。
  • 環境への配慮:家庭での廃棄物の適切な分別とリサイクルを徹底し、ダイオキシン発生の原因を減らす。車の多い車道や所の近くに行かない。

PCB(ポリ塩化ビフェニル)

概要と用途
PCBはかつて工業用の絶縁油や冷却材に使われていましたが、環境中に残留しやすく、1970年代以降多くの国で使用が禁止されています。PCBは日本でも使用が禁止されていますが、長期間にわたり環境中に残留する性質があるため、汚染地域の海産物や動物性食品を通じて摂取してしまう可能性があります。

健康への影響
PCBは甲状腺ホルモンや性ホルモンに干渉し、特に胎児や子どもに対して、成長や神経発達に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。

代替品の提案

  • 魚の種類と産地を選ぶ:脂肪分が多い大型の魚(例えばマグロ、サケ、サバなど)はPCBを蓄積しやすいため、種類や産地に注意することが有効。また、小型の魚や脂肪分が少ない魚は比較的安全です。
  • 脂肪分の少ない部位を選ぶ:PCBは脂肪に溶け込みやすい性質があるため、動物性食品では脂肪分の少ない部位を選ぶとPCBの摂取リスクが低減されます。
  • 加工方法に気を付ける:焼いたり、脂肪分を取り除く調理法(例えばグリルやオーブンでの調理)を使うと、PCBを含む脂肪を減らすことができる場合があります。
  • 汚染されていない魚を選ぶ:産地や種類に注意して購入する。
  • 古い電気機器の処理:PCBを含む可能性のある古い機器は専門業者に引き取ってもらう。

パラベン

概要と用途
パラベンは、防腐剤として化粧品や医薬品、食品に使用され、製品の保存期間を延ばすために広く用いられています。ファンデーション、リップスティック、アイシャドウなど、多くの化粧品や肌に直接使用する保湿クリームやボディローション、日焼け止め、シャンプーやコンディショナー、ボディソープなどのヘアケア・ボディケア製品、医薬品(クリームや軟膏)、デオドラントや制汗剤にもパラベンが含まれることが多く、微生物の繁殖を防ぐためにパラベンが使われることがあります。

健康への影響
パラベンはエストロゲンに似た作用を持ち、ホルモンバランスに干渉する可能性があり、乳がんのリスクが懸念されています。

代替品の提案

  • パラベンフリーの化粧品を選ぶナチュラルコスメやオーガニック製品を使用。
  • シャンプーやコンディショナー:防腐剤不使用のものや短期間で使い切る製品を選ぶ。

まとめ

内分泌攪乱化学物質(EDC)は日常生活で使用される製品に広く含まれており、特に胎児や子ども、妊娠中の女性に対する健康リスクが懸念されています。EDCがホルモンバランスを乱すと、がん、不妊症、発達障害などのリスクが高まる可能性があります。健康への影響を軽減するために、EDCを含まない製品を選んだり、環境に優しい代替品を取り入れることで、日常的なリスクを減らすことができます。

どれも身近にあるものばかり!特にパラベンは細菌繁殖を防ぐ効果があるため完全にフリーな生活は難しいですが、直接肌に触れないようにする工夫はできそう。食品管理もラップやアルミホイルを直接食材に触れないようにクッキングペーパーを1枚挟むなどの工夫もできますね。良い方法があればぜひ教えてください。

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