レジスタンストレーニング活用法
レジスタンストレーニングとは、筋肉に負荷をかけることで筋力や筋肉量を増やすトレーニング方法です。
最近では特に筋力を維持するために必須と言われています。ここではレジスタンストレーニングの正しい活用法について解説していきます。
レジスタンストレーニングのメカニズム
-
神経筋適応
トレーニングを繰り返すことで、脳からの指令が筋肉に到達しやすくなり、筋肉がより速く収縮しさらに強い力を発揮できるようになります。また筋肉の収縮反応も脳に伝わり、脳神経と筋肉の回路が強く繋がっていきます。
-
筋肉の成長
レジスタンストレーニングによって筋繊維が一時的に損傷し、修復する過程で筋肉が強く肥大化します。
-
ホルモンの分泌
筋トレを行うと、テストステロンや成長ホルモンなどの筋肉成長を促すホルモンが分泌されます。これにより、筋肉の増強がさらにサポートされます。
レジスタンストレーニングの利点
レジスタンストレーニングは多くの面で体に良い影響を与えます。
多くの研究で持久性運動よりも筋力の向上効果が高いと報告されています。また、筋肉から分泌されるホルモン、マイオカインもレジスタンストレーニングにおいて合成されることがわかっています。
-
骨密度の向上
骨に対する多方向のストレスが加わることで、骨密度が増加し、骨粗しょう症などのリスクを軽減します。
-
代謝の改善
筋肉量の増加によりエネルギー消費が高まり、インスリン感受性が向上するため、血糖値の管理が改善されます。
-
関節の安定性とバランス向上
筋肉が関節をサポートすることで、関節の安定性が高まり、バランス能力も向上します。
-
脳の健康促進
トレーニングにより神経成長が促進され、認知機能や脳の健康にも良い影響を与えます。
レジスタンストレーニングのさらなる効果
レジスタンストレーニングは筋肉だけでなく、全体的な健康に寄与します。
-
神経筋機能の向上
筋肉の収縮速度や強度が向上し、日常生活やスポーツでの動作がスムーズになります。
-
心血管の健康
血管の柔軟性が増し、血管の拡張・収縮の反応が改善され、血圧の安定化に寄与します。
-
体組成の改善
筋肉量の増加によって基礎代謝が上がり、内臓脂肪や全体の体脂肪が減少します。
-
筋力と持久力の向上
筋力や持久力が増すことで、体力が向上し、日常生活やスポーツパフォーマンスの改善が期待できます。
トレーニングプログラムの計画
体に良いレジスタンストレーニングですが、やりすぎは危険であり、適切な量と方法を選ぶことが重要です。
バランスの取れたトレーニングをするためにピリオダイゼーションという方法があります。これは、トレーニングの目標を時間的なブロックに分けて計画的に進めていくやり方です。
-
集中ブロック
ある期間は特定の目標、たとえば筋力アップに集中的に取り組む一方で、他の目標は維持するレベルに留めておく。これにより、効率的に成果を上げることができます。
-
性差の考慮
女性アスリートでは、日々の回復や月経周期における体の反応を考慮したプログラムが必要です。
-
サイクルの構造
ピリオダイゼーションには、短期(数日)、中期(数週間から数ヶ月)、長期(数年)で設定するサイクルが含まれ、通常は男性を基にした設計が一般的ですが、女性に合わせた調整が求められます。
レジスタンストレーニングには、筋力向上や健康維持のための多くの効果が期待できます。しかし、その実践にあたっては、適切な運動メニューと頻度、強度を設定することが重要です。
レジスタンストレーニングの代表的なメニュー
- 基本的な複合筋群を鍛えるマルチジョイントエクササイズ: スクワット、デッドリフト、ベンチプレス、プルアップ、オーバーヘッドプレスなど
- 補助的な単関節エクササイズ: レッグカール、アームカール、ショルダープレスなど
- コアトレーニング: プランク、サイドプランク、腹筋トレーニングなど
これらの運動を組み合わせ、全身の筋肉を効果的に鍛えることができます。
目的ごとのレジスタンストレーニングの頻度と強度
筋力アップを目的とする場合
- 週3-4回が望ましい
- 同一筋群を48時間以上休息をとることが重要
- 1-5レップの範囲で、1RM(1回最大挙上可能重量)の70-85%程度が適切
- 疲労困憊まで行うことで、筋肥大効果が最大化される
筋力維持を目的とする場合
- 週2回のレジスタンストレーニング
- 同一筋群を48時間以上休息をとることが重要
- 8-12レップの範囲で、1RM(1回最大挙上可能重量)の60-70%程度が適切
- 完全な疲労困憊まで行う必要はない
-
ただし、個人の体調やトレーニングレベル、目的によって、頻度や強度を適宜調整する必要があります。
特に女性の場合は、月経周期に応じた細かな調整が求められます。また、思春期の女性では、身体的変化にも配慮が必要でしょう。
これらのポイントを押さえ、自身の状態に合わせてレジスタンストレーニングを実践することで、最大の効果を出していきましょう!
トレーニングの関連記事はこちら
パフォーマンスを引き出す炭水化物と栄養素のベストバランス
レジスタンストレーニング
トレーニングの種類と組み合わせ
遺伝子による男女のトレーニング法の違い
【参考文献】
- Cormie, P., et al. (2011). Developing maximal neuromuscular power. Sports medicine, 41(1), 17-38.
- Schoenfeld, B. J., et al. (2016). Influence of resistance training frequency on muscular adaptations in well-trained men. The Journal of Strength & Conditioning Research, 30(1), 273-283.
- Ralston, G. W., et al. (2017). The effects of load-and repetition-matched resistance training programs on muscular performance. The Journal of Strength & Conditioning Research, 31(10), 2739-2745
- Schoenfeld, B. J., et al. (2017). Differential effects of heavy versus moderate loads on measures of strength and hypertrophy in resistance-trained men. The Journal of Strength & Conditioning Research, 31(10), 2635-2643
- Melin, A., et al. (2015). Energy availability and the female athlete triad in elite endurance athletes. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 25(5), 610-622
- Mountjoy, M., et al. (2014). The IOC consensus statement: beyond the Female Athlete Triad—Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S). British journal of sports medicine, 48(7), 491-497
- Logue, D. M., et al. (2020). Low Energy Availability in Athletes 2020: An Updated Narrative Review of Prevalence, Risk, Within-Day Energy Balance, Knowledge, and Impact on Sports Performance. Nutrients, 12(3), 835
- Müller, S. M., et al. (2020). Prevalence of the female athlete triad and its associated risk factors in elite athletes in switzerland. BMC sports science, medicine and rehabilitation, 12(1), 1-10.