運動の質を変える!炭水化物と栄養素の黄金バランス

 

アスリートのための炭水化物摂取ガイドライン

アスリートのエネルギー供給やパフォーマンス向上の鍵は、適切な炭水化物摂取にあります。活動レベルに応じたバランスの取れた栄養戦略が、運動の質を飛躍的に高めるのです。以下は、様々な活動レベルにおける炭水化物摂取の目安となっています。

 

軽度の活動(低強度、スキルベースの活動)

  • 推奨摂取量: 3-5 g/kg/日
  • : 軽いウォーキングやスキルトレーニング。
  • 低強度の運動ではエネルギー消費が少ないため、少量の炭水化物摂取でも体に必要なエネルギーを十分補うことができます。

中程度の活動(1時間/日)

  • 推奨摂取量: 5-7 g/kg/日
  • : ジョギング、軽いサイクリングなどの中強度エクササイズ。
  • 中程度の運動は、エネルギーと筋肉のグリコーゲン補充が必要であり、適度な炭水化物摂取が推奨されます 。

高強度の活動(1-3時間/日)

  • 推奨摂取量: 6-10 g/kg/日
  • : マラソンや長時間の自転車競技など。
  • 高強度のトレーニングでは、筋グリコーゲンの消費が増えるため、しっかりとした炭水化物補給が必要です。特に持久系スポーツのアスリートは、これによってパフォーマンスを維持しやすくなります 。

非常に高強度の活動(3時間以上)

  • 推奨摂取量: 8-12 g/kg/日

  • : トライアスロンや長時間の競技イベント。
  • 極度の活動においては、エネルギー消費が非常に高く、持久力と回復に大きく影響するため、炭水化物の摂取量も高く設定されています 。

研究の背景とエビデンス

この推奨は、157の文献を基にしており、特に女性に関連する研究も含まれています。以下はその一部です:
- エネルギー不足症候群(LEA)、骨、月経機能障害に関する研究: 7件
- 鉄欠乏に関する研究: 7件
- 肥満のプレ更年期女性における乳製品とタンパク質摂取が脂肪減少や筋肉量増加を促進する研究: 1件
- 未トレーニングのプレ更年期女性における流動乳摂取と体組成、抵抗運動に関する研究: 1件
 
これらの研究は、アスリートの健康とパフォーマンスの向上に欠かせないデータを提供しており、炭水化物摂取ガイドラインを支える基盤となっています。特に、性差に基づく栄養戦略がアスリートのパフォーマンスや健康に与える影響を考慮することが重要です。近年の文献は、炭水化物の摂取は、エネルギー供給だけでなく、筋グリコーゲンの補充、免疫機能の維持、精神集中やホルモンバランスにも影響を与えるため、アスリートは自分の活動レベルや身体の状態に応じた適切な摂取を心がける必要があります。
 

アスリートが陥りやすい栄養障害

  • エネルギー不足症候群(LEA)
    運動によって消費されるエネルギーに対し摂取エネルギーが足りない状態をいいます。特に骨密度の低下や月経不順、疲労感の増加など健康に深刻な影響を与えます。

  • 鉄欠乏症
    アスリートは鉄の消費が激しく、特に女性は月経も影響して鉄欠乏症に陥りやすいです。酸素運搬能力が低下し、疲労や息切れが生じ、パフォーマンスが低下します。

  • ホルモンバランスの乱れ
    栄養不足やエネルギー不足は、エストロゲンやテストステロンの分泌に影響し、女性では月経不順や骨密度の低下、男性では筋肉量の減少などを引き起こす可能性があります。炭水化物がホルモンの分泌と回復に与える影響も研究されており、特にプレ更年期女性のアスリートに対して脂肪減少のメリットが示されています 。

  • ビタミンD欠乏症
    屋内トレーニングの多いアスリートは日光に十分当たらず、ビタミンD不足になりがちです。ビタミンDは骨の健康を保つために重要で、不足すると骨密度が低下するリスクがあります。

  • カルシウム不足
    エネルギー不足や特定の食事制限によりカルシウム摂取が不足すると、骨の健康が損なわれ、特に成長期の若いアスリートでは骨折のリスクが高まります。

  • ナトリウム不足
    大量の汗をかくスポーツでは塩分が失われやすく、ナトリウムが不足すると筋肉のけいれんや体力低下の原因になります。運動中にはスポーツドリンクでの補給が有効です。

上記の3項目に関しては適切な炭水化物摂取によりこのリスクが軽減されることがわかっています 。

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炭水化物の必要性とその他の栄養素

炭水化物の摂取は、単なるエネルギー供給だけでなく、ホルモンバランスの維持や免疫機能の強化にもつながりが十分に供給されていることで、持久力向上や筋肉の回復にも効果が期待できます。したがって、アスリートは活動の内容や強度に応じて、適切な炭水化物摂取を心がけることが推奨されます 。

炭水化物を運動前後に摂取する際、エネルギー供給や回復を最大化するため、以下の栄養素を一緒に摂取すると効果が高まります。

 

  • タンパク質: 筋肉の回復と成長を助け、炭水化物と一緒に摂ることで筋グリコーゲンの再合成が促進されます。
  • 電解質: 筋肉の収縮や水分補給をサポートし、疲労防止や筋肉の痙攣予防に役立ちます。
  • ビタミンB群: エネルギー代謝をサポートし、運動の効率を高めます。
  • ビタミンCとビタミンE: 抗酸化作用があり、運動による酸化ストレスや炎症を軽減します。
  • 脂質(中鎖脂肪酸/MCT): 持久力向上に役立つ即効性のエネルギー源として活用されます。
  • 鉄分: 酸素の運搬を助け、筋肉への酸素供給を増強します。
  • オメガ-3脂肪酸: 抗炎症作用があり、筋肉の回復と疲労軽減をサポートします。
  • クレアチン: 筋力と瞬発力を高め、筋肉のエネルギー回復を促進します。
  • 亜鉛: 免疫機能をサポートし、運動後の免疫力低下を防ぎます。
  • 水分: 血液循環、筋肉機能、体温調整を助け、電解質飲料がさらに効果的です。

 

 

栄養素摂取の最適なタイミング

 
以下にレジスタンス運動、有酸素運動それぞれの運動前後の栄養素の摂るタイミングをまとめた表を作りました!栄養素を摂るタイミングを誤ると、運動効果が低下するだけでなく、疲労の蓄積や体調不良を引き起こす可能性があります。ぜひ皆さんの運動時のご参考にしてみてくださいね。私も運動時のお供にビタミンCとBCAAは欠かせません。。。

 

 

運動の種類 タイミング 栄養素 摂取量 時間の目安 役割・効果
レジスタンス運動 運動前 炭水化物 1-2 g/kg 3-4時間前 エネルギー供給、筋力維持
    タンパク質 0.3 g/kg 1-2時間前 筋タンパク質分解抑制
    BCAA 2,000-4,000 mg 30分前 筋タンパク質合成促進、疲労軽減
    電解質(ナトリウム、カリウム) 500-700 mg ナトリウム(飲料) 30分前 水分補給、筋肉収縮のサポート
  運動中 BCAA 2,000-4,000 mg 運動中 筋タンパク質分解抑制、疲労軽減
  運動後 炭水化物 0.8-1.2 g/kg 30分以内 グリコーゲン回復、エネルギー再補充
    タンパク質 0.3-0.5 g/kg(20-40 g程度) 45分以内 筋肉修復と成長促進
    BCAA 2,000-4,000 mg 30分以内 筋タンパク質合成促進、回復促進
    必須アミノ酸(EAA) 6-12 g 1時間以内 筋タンパク質合成促進
    ビタミンC、ビタミンE 推奨摂取量に準ずる 1-2時間以内 抗酸化作用、筋肉の炎症軽減
    オメガ-3脂肪酸 1-2 g 1-2時間以内 炎症抑制、筋肉痛軽減
    水分(電解質含む飲料) 体重減少の150-200% 2-6時間以内 水分補給と電解質バランス回復
有酸素運動 運動前 炭水化物 1-4 g/kg 1-4時間前 エネルギー供給、持久力向上
    BCAA 2,000-4,000 mg 30分前 筋タンパク質分解抑制、疲労軽減
    電解質(ナトリウム、カリウム) 500-700 mg ナトリウム(飲料) 30分前 水分補給と電解質バランス維持
  運動中(60分以上) 炭水化物 30-60 g/時 運動中 エネルギー維持、疲労遅延
    BCAA 2,000-4,000 mg 運動中 筋タンパク質分解抑制、疲労軽減
  運動後 炭水化物 1-1.2 g/kg/時 4-6時間 グリコーゲン回復、疲労軽減
    タンパク質 0.2-0.3 g/kg 45分以内 筋肉の回復促進、持久力の維持
    BCAA 2,000-4,000 mg 30分以内 筋タンパク質合成促進、回復促進
    ビタミンB群 推奨摂取量に準ずる 1-2時間以内 エネルギー代謝サポート
    水分(電解質含む飲料) 体重減少の150-200% 2-6時間以内 水分補給と回復促進
    必須アミノ酸(EAA) 6-10 g 1時間以内 筋肉回復と疲労回復

 

炭水化物を摂る際に注意したいこと!糖化リスクを避けよう

空腹時に炭水化物だけを摂取すると、血糖値が急激に上昇し、運動効率の低下や血管への負担につながる可能性があります。運動をするからといって無闇に炭水化物を摂るのではなく、以下の注意点が必要となってきます。

  1. 低GI値の血糖値の上昇が穏やかな食品を選択
  2. 同時にタンパク質、脂質を摂取して血糖値上昇を抑える
  3. 空腹時にCHO単体で摂取しない
  4. 血糖値モニタリングをして自分に最適なCHOの種類とタイミングを知っておく

 

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参考文献
  1. 元永恵子ら (2022) "Effect of Different Carbohydrate Intakes within 24 Hours after Glycogen Depletion on Muscle Glycogen Recovery in Japanese Endurance Athletes" Nutrients, 14(7):1320
  1. Burke LM, et al. (2011) "Carbohydrates for training and competition" Journal of Sports Sciences, 29(sup1):S17-S27
  2. Thomas DT, et al. (2016) "Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance" Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 116(3):501-528
  3. Jeukendrup AE. (2014) "A Step Towards Personalized Sports Nutrition: Carbohydrate Intake During Exercise" Sports Medicine, 44(1):25-33
  4. 鈴木志保子 (2018) "スポーツ栄養学" 日本医事新報社
  5. Kerksick CM, et al. (2017) "International society of sports nutrition position stand: nutrient timing" Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14:33
  6. Stellingwerff T, Cox GR. (2014) "Systematic review: Carbohydrate supplementation on exercise performance or capacity of varying durations" Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 39(9):998-1011

 

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