女性の身体に革命を!ホルモン周期に合わせた運動プログラム

 
女性のトレーニングでは、年齢やホルモンの変化を考慮したトレーニング戦略が効果的です。ここではプレ更年期や避妊、更年期前後の女性向けのトレーニングについて、具体的な方法とその効果を取り入れたプランを紹介します。

 

プレ更年期における強度とパワートレーニング

プレ更年期は、30代後半から40代前半に訪れる、更年期前の段階です。この時期には、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌が緩やかに減少を始め、体内の代謝や心と身体のバランスに影響を与えます。プレ更年期の女性にとって、月経周期に合わせてトレーニング内容を調整することで、ホルモンレベルの変動に応じた筋力やパワーの効果を最大化します。

  • フェーズベースのトレーニング*

    1. 卵胞期(月経開始から約14日目まで): エストロゲンの分泌が急増する時期であり、筋力や集中力が高まりやすくなります。この期間は、重い重量を用いた高強度トレーニング(例: スクワットやデッドリフト)に最適です。
    2. 排卵後の黄体期(月経開始から約14日以降): プロゲステロンの影響でエネルギー消費が高まるため、レップ数を増やして筋持久力を養うトレーニング(例: 8-12回を3-4セット)や、全身の代謝を促すサーキットトレーニングが推奨されます。
  • 具体的なトレーニング例

    1. 筋肥大: スクワットやデッドリフトを中重量で10-12回を3-4セット行うと、筋肉量が増え、代謝も促進されます。
    2. 強度とパワー向上: クリーンやパワークリーンなどのパワーリフティングを高重量で低レップで行うと、瞬発力が養われ、スポーツパフォーマンスの向上に役立ちます。
    3. 自宅でできる運動:スクワット・ジャンピングスクワット・デッドリフト(自重または軽い重り)・バーピー・エア自転車こぎ・踏み台昇降

ホルモン避妊の影響を考慮したトレーニング

ホルモン避妊薬*を使用する場合、プロゲスチンの種類によってトレーニング効果や体の反応が変わることがあります。

  • プロゲスチンの種類と影響: ホルモン避妊は、エストロゲンやプロゲステロンのバランスに作用し、エネルギー消費や集中力に影響を与えることがあります。このため、トレーニング中の疲労感やパフォーマンスの変化を感じる場合があり、適切な調整が必要です。筋力トレーニングや持久力トレーニングを組み合わせて、健康維持とパフォーマンス向上のバランスを取ることが大切です。
  • トレーニングのポイント:
    • 疲労を感じやすい時期は、リカバリーを優先し、軽い重量でレップ数を増やすエクササイズを導入します。
    • 周期に応じて高強度インターバルトレーニング(HIIT)などの短時間で集中したエクササイズを組み込むと、エネルギー消費や代謝を高める効果が期待できます。

更年期前後のトレーニング戦略

更年期では、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に低下し、筋肉量や骨密度の減少が進みやすくなります。これに対応するためには、筋力を維持する高重量トレーニングや、骨の健康を支える持久力運動が欠かせません。

  • 重めの抵抗トレーニング: 筋力を保ち、骨密度を向上させるため、スクワットやデッドリフトなどの高重量低レップ(例: 5-6回を3セット)のトレーニングを行います。特に脚や背中の大きな筋肉を鍛えることで、代謝も高まります。

  • 高強度インターバルトレーニング(HIIT)*: 心肺機能の向上と体脂肪減少に効果的です。30秒の全力運動と30秒の休憩を交互に行うセットを5-10分行うことで、効率的に脂肪燃焼が促進され、心肺機能も改善されます。

  • プライオメトリクス/パワートレーニング: プライオメトリクス(ジャンプやスキップなどの爆発的な動作)は、下半身の筋力と柔軟性を高め、骨の健康もサポートします。バウンディングジャンプやボックスジャンプを取り入れると、脚の筋力アップに効果的です。

  • 持久力トレーニング: 心肺持久力を高めるために、週1~2回のランニングやサイクリング、スイミングを取り入れましょう。これにより、心臓や血管の健康が促進され、代謝の維持にも役立ちます。ただし、過度のトレーニングは筋肉や関節に負担をかけるため、他のトレーニングとバランスを取ることが重要です。

運動が大切とはいえ、この時期には気分が落ち込みやすくなることもあるでしょう。積極的に動くのが難しいと感じる時は、ただ公園を散歩してみるだけでもおすすめです。リラックスしながら身体を動かすと心身の健康に良い影響を与えます。
無理をせず、自分の身体の声を聞きながら楽しんでみてくださいね。

トレーニング計画のポイント

女性のトレーニングでは、年齢やホルモンの影響を考慮したトレーニング計画が必要です。特に、プレ更年期や更年期の女性には、骨密度の低下や代謝の変化を補うためのトレーニングが効果的です。特に更年期以降の骨密度の低下予防には、週に3回以上の筋力トレーニングを行うことが推奨されます。

  • 個別の体調管理: フェーズや体調に応じて、強度や頻度を調整することで無理なく続けられるプランが組めます。
  • トレーニングバリエーション: 筋肥大、筋力、持久力、パワーといったさまざまな要素をトレーニングに取り入れると、総合的なフィットネスの向上が期待できます。

これらの要素を考慮し、女性アスリートが年齢やホルモンの変動に応じた最適なパフォーマンスを発揮できるように、計画的でバランスの取れたトレーニング戦略を実践することが重要です。

今回の内容については私も知らなかったことが多く勉強になりました。月経周期やホルモン変動に合わせてトレーニングメニューを組んでみる、というのは面白い取り組みですね!自分でもやってみようと思います。やってみた方は結果シェアしてくださいね!
*フェーズベーストレーニング:トレーニングプランを複数の段階(フェーズ)に分けて実施する方法。このアプローチは、特定の目標に向けて段階的に進むことを目的としており、各段階で異なる目標を設定し、それに応じたトレーニングを行うことで、怪我を予防に効率的にパフォーマンスを向上させることができます。
*ホルモン避妊薬:女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を含む経口薬で、主に避妊や月経に関連する症状の改善を目的としています。低用量ピル超低用量ピル、中用量ピル、アフターピルの分類があり、目的に応じて医師と相談し処方されます。
*HIIT(高強度インターバルトレーニング):短時間で高強度の運動と休憩を交互に行うことで、脂肪燃焼と持久力向上を目指すトレーニング方法です。20秒の高負荷運動と10秒の休憩を組み合わせ、最低6~8セットなど、トータル4分間など、短時間で行います。運動後も代謝が高い状態が続く「アフターバーン効果」が期待できるため、効率的な脂肪燃焼や心肺機能の向上効果が注目されています。
 

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参考文献
  1. Elliott-Sale, K.J., et al. (2020). "The Effects of Menstrual Cycle Phase on Exercise Performance in Eumenorrheic Women: A Systematic Review and Meta-Analysis."
    Sports Medicine, 50(10), 1813-1827.
    このメタ分析は、月経周期が女性の運動パフォーマンスにどのように影響するかを評価しています。結果として、月経周期の特定のフェーズで運動パフォーマンスが向上することが確認され、フェーズに応じたトレーニング戦略が重要であると結論付けられています。

  2. Sims, S.T., & Heather, A.K. (2018). "Myths and Methodologies: Reducing Scientific Design Ambiguities in Studies Comparing Sex and Gender Differences in Exercise Performance."
    Frontiers in Nutrition, 5, Article 94.
    女性のトレーニングに関する誤解を減らすためのデザインと方法論についての論文です。女性の生理的特性を踏まえたトレーニングがパフォーマンス向上にどう役立つかを示しており、女性特有のトレーニング戦略の必要性を裏付けます。

  3. Vingren, J.L., et al. (2010). "Testosterone Physiology in Resistance Exercise and Training: The Up-Regulation of Androgen Receptors."
    Sports Medicine, 40(12), 1037-1054.
    テストステロンが筋力と筋肉の発達に与える影響についてのレビューであり、特に女性がレジスタンストレーニングを行う場合のテストステロンの役割を議論しています。これにより、性別や加齢に応じたトレーニングの最適化について理解が深まります。

  4. Bell, S.L., et al. (2020). "The Influence of Hormonal Contraceptive Use on Female Exercise Performance and Adaptations to Resistance Training."
    Medicine and Science in Sports and Exercise, 52(6), 1253-1264.
    ホルモン避妊薬の使用が女性の運動パフォーマンスとトレーニング適応にどのように影響するかを調査した研究です。ホルモン避妊の種類と運動適応の関係について明確なエビデンスを提供しています。

  5. Ihalainen, J.K., et al. (2021). "The Effects of Menstrual Cycle Phase on Hormonal Responses to Resistance Exercise in Women."
    Journal of Strength and Conditioning Research, 35(6), 1535-1542.
    月経周期に伴うホルモンの変動がレジスタンストレーニングのホルモン応答に与える影響を研究したもので、女性アスリートのトレーニングプログラムのデザインに対する有用な知見を示しています。

  6. Rickenlund, A., et al. (2004). "Amenorrhea in Female Athletes is Associated with Impaired Endothelial Function and Lipid Profile."
    The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 89(8), 3828-3832.
    無月経が女性アスリートの血管機能や脂質プロファイルに及ぼす影響についての研究です。ホルモンバランスの乱れが身体の健康やパフォーマンスに与える影響を明らかにし、適切なトレーニング戦略の重要性を強調しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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